ラノベ『六人の赤ずきんは今夜食べられる』の感想です。
KindleUnlimitedで読みました。
結論からいいますと、「荒いところもあるが面白い。Amazonレビュー20弱なのはもったいない」です
主人公は猟師。ある村に訪れたとき、不穏なことを言われます
「今夜、ジェヴォーダンの獣が出る」
ジェヴォーダンの獣。とても大きく、賢く、そして凶暴なオオカミ。
オオカミは年に一度現れ、「秘薬」を作れる少女 赤ずきん を喰らう。
そして猟師は6人の赤ずきんを救うべく、「魔女の塔」に籠城し一夜を切り抜ける決心をします。
しかしその6人の中に裏切り者の気配が...
赤ずきんのタイトルどおり、童話をベースにしたミステリーです。
巧みな設定
非常に設定が良かったです。面白いと感じたのは以下の2点
- 赤ずきんの「秘薬」
- ものを透明にする、匂いを消すなど普通ではありえない特殊効果がある
- 全員、違う種類の秘薬を作れる
- オオカミが「賢い」
- 常に秘薬やトラップを警戒する慎重さがある
このため、秘薬を駆使した主人公とオオカミの頭脳バトルが繰り広げられます。もちろん肉弾戦もあります。
二重三重に罠を張る主人公、そして常に罠を先読みし策をめぐらすオオカミ。この戦いはこの作品の魅力の一つです。
絶え間ない緊張感
この作品のもうひとつすごいところは、常に緊張感がある こと。
まさに一難去ってまた一難。次々と主人公たちにピンチが訪れます。
常に紙一重で苦境を脱出するも、再びオオカミが別の手段で襲いかかる。これが一晩みっちり続きますw
読んでてずっとハラハラでき、とても面白かったです。
また「味方に裏切り者がいる」のもポイントですね。
オオカミに対抗するだけでなく、裏切り者にハメられないようにしないといけない。
もちろん裏切り者も馬鹿ではなく、普段は全員の生存に対し協力的です。
誰もが白で、誰もが黒...そんななか、極限のオオカミとの頭脳戦が繰り広げられます。
気になったところ
設定や展開の面白さに関わらず、満点にできない理由が「描写の甘さ」
正直何が起こったのかよくわからないシーンがたくさんありました。
まず建物の構造がよくわからない。その上、主人公たちがどこにいるのかわからない。
自分は頭から抜け落ちてたのですが、口絵の「地図/断面図」とにらめっこしながら読み進めないとつらいです。いえ、そうしてもよく分からないところが
さらに勝手にキャラの位置が動いてたりするのでもう何がなんだか。(Ex:入り口からオオカミが突進>その後バックステップでなぜか中庭。いつの間に主人公と位置入れ替わった?)
このへんが把握できず、何度も読み直したシーンが複数あります。読み返しても分からなかったのがまたつらい...
同様に赤ずきんが矢継ぎ早にでてくるので、各キャラの特徴・秘薬を把握しきれないまま先に進んでいきます。せめてもう少し挿絵が多ければ...
このへんがKindle、とくに純正Kindle端末の欠点で、口絵に戻るのがめちゃくちゃめんどくさいんですよね...その上Kindleは口絵をカットして始まったりする(した)
真面目に二度読まないとこの作品、しんどいです。
作品のテンポを優先したためか、こういう問題が全体に渡ってありました。もう少しテンポ落としていいから、しっかり文章で解説してくれるともっと面白かったと思います。
まとめ
設定・展開の巧みさを、説明不足の文章が足を引っ張っている非常に惜しい作品という印象でした。
このへん、著者が誰かに読んでもらって素直な感想を聞けばどうにかできた問題ではないか?とも思います。それが余計に惜しい
とはいえ絶対的には面白い作品に入ります。現に3時間で一気に読み終えました。それぐらいのめり込みました。
二度読みしないとつらい部分があるのは事実ですが、緊張感のある物語が好きならきっと性に合うと思います。まずはサンプルだけでもいいのでぜひ手にとって見てください